大雪渓と精米
お酒を造る工程で《精米》はとても重要なことは皆様ご存知かと思います。
それをあらわす指標が【精米歩合】というもので、表示義務のあるお酒のラベルにも記載されております。
これは玄米が100%としたところ、削った結果重量換算で何%残ったかを表しているものです。
なので、4割の重量を削ったものは6割が残りますので、精米歩合は60%ということになるのです。
昨今では《二割三分磨き》という名称や《精米歩合10%》など酒米の7割以上も削って仕込むようなお酒も珍しくないものになって参りました。
では何で日本酒はこんなに原料米を削ってしまうのでしょうか?当蔵のお酒を例にご紹介をさせていただきます。
日本酒の世界では精米のことを《磨く》と表します。
綺麗な宝石をより輝かせるように、それはお酒造りにとって最も良いとされる酒米の部位を残すために行われます。
元来酒米はデンプン質やタンパク質、脂質など様々な成分で構成されており、その成分は日本酒の香味にも多大な影響を与えます。
その中のタンパク質はお酒の雑味を生み出す要因となりやすく、また脂質はフルーティで華やかな成分を抑制する要因となり、これらはお米の表層部に多く存在しています。一方、酒米の中心部にある《心白》はより純粋なデンプン質で構成され、お酒の香味を阻害する成分は少ないので、表層部を磨くことで日本酒の香味を阻害する栄養素を取り除くことが精米の大きな目的というわけなのです。
このようにお米をより綺麗に磨くということはとても労力と費用を要するため、一般的に大吟醸や吟醸酒といった高精米のお酒は価格が高くなる傾向にあります。
ただ精米歩合が高い=良いお酒とは単純に言えず、酒米のタンパク質はお酒の旨味成分にもなりますし、様々な要素が加わりお酒の良し悪しが決まってくるのも日本酒の面白さと言えるかもしれません。
大雪渓酒造では平成26年、全国でも有数な高精度の精米機を導入し、酒米を玄米で仕入れて自社で精米をし、酒造りの原料米に使用する製造工程に致しました。
ダイヤモンドロールを搭載した精米機で1回に二昼夜ほどかけて、ゆっくりと丁寧に磨き上げます。
時間をかけて精米されることにより割れのない均一な磨きが施され、米のばらつきが無いため、洗米や浸漬工程での吸水にムラが無くなり、蒸し上りも粒によって差が生まれにくくなります。
また、玄米から原料米を自社管理することにより、精米前後の正確な保管状態を知ることが出来るので、お米の性質が分かった上で酒造りに臨めます。
繊細な精米と酒米の管理は酒造りにとってとても重要な項目の一つで、安定した酒質を提供し続けるための大きな要素となっております。
図に示しましたように精米歩合70%以下で本醸造酒、60%以下で純米吟醸酒・吟醸酒・特別純米酒・特別本醸造酒、50%以下が純米大吟醸酒・大吟醸酒の条件となります。
当蔵の本醸造酒は掛米は65%、麹米に至っては59%という精米を施し、また純米吟醸・吟醸酒は55%、大吟醸酒は35%という基準よりさらに上の拘りの中、手間暇をかけて酒造りを行ってまいりました。これは長年の蔵人の経験より酒種によって最も良い精米の値と判断し、旨味がありながらもスッキリと飲める綺麗な後味の大雪渓らしいお酒を目指し、原料米から大切に扱い、手仕事による繊細な作業でお酒を丁寧に醸し上げる使命のもと、日々励んでおります。
お酒は気候や水、米など地域の大自然や沢山の人々の恩恵を受けて育った芸術品だと思います。
ぜひ沢山の方々にお召し上がりいただけたら幸いです!